熱電変換材料の物性計測および熱工学的応用

背景および目的

近年,原油の高騰や地球温暖化といった深刻な問題が取り上げられ,エネルギー問題が身近なものとなっている。そのような状況で,風力発電や太陽光発電など自然エネルギーを利用した発電が環境にやさしい発電として着目を浴びており,あらゆるエネルギーを発電に利用しようとする動きが活発になっている。その一方で熱エネルギーの多くは廃棄され,その量は一次エネルギーの約60%にも及ぶことが知られている。このような使えない廃熱から発電する技術として,熱電発電とよばれる技術が注目されている。本技術は、本来発電に使えないような極めて低い温度をもつ熱からも発電できる技術である。効率が低いためコスト高で、いまだに日常で目にしない技術であるが,宇宙では30年以上も前から利用されており,実績のある技術である。近年は,新材料や構造制御により高効率で低コストな材料の研究開発が進んでいる。

熱電材料の性能指数Zはゼーベック係数,比抵抗,熱伝導率の積で導かれるため,各物性値の測定精度が性能指数評価の信頼性を大きく左右する。最も測定が難しい熱伝導率測定には,これまで定常法やレーザーフラッシュ法,ハーマン法が用いられてきた。しかし,測定精度,測定時間,温度域,測定方向に制約があり制約が大きい。したがって,異方性を有する熱電材料の熱電性能パラメータを同時測定するためには新しい着想に基づく提案が必要となる。
そこで本研究は熱電材料の三軸方向の熱電性能パラメータ(ゼーベック係数,比抵抗,熱伝導率)を同時に,しかも高い精度で評価できるマルチセンシング手法を確立し,新規高熱電変換材料の高信頼性評価を実現することを目的とする。

方法

本研究の提案する熱電性能3物性同時計測法は,独自に考案した周期加熱法による異方的熱拡散率測定の原理を拡張したもので,同一セッティングでゼーベック係数,比抵抗,熱伝導率を同時に測定することが原理的に可能である。本研究では,新しい計測装置を構築し,同時計測の実現性検証を行う。また,3熱電物性同時計測装置を測定温度範囲の拡大、薄膜試料への対応も目指す。さらに,新たに構築した同時測定装置を用いて,様々な新規熱電材料の熱電物性の温度依存性と異方性を明らかにしていく。 本研究により,高熱電変換材料の評価技術の信頼性向上,迅速化,ならびに材料開発にフィードバックをかけることで新規高熱電変換材料の最適なシステムデザインと実用化への貢献を目指す。

 

主な成果

図1 同時計測装置の構成図
図2フィルム型点接触熱電対プローブ
図2フィルム型点接触熱電対プローブ

(山崎 匠)