革新的繊維配向同定手法の研究開発

背景および目的

近年航空宇宙分野や運輸分野で炭素系複合材料(CFRP)の実用化が期待されている。航空機や自動車の熱設計には,材料の熱伝導特性が必要となるが,複合材料は異方性,不均質性があるため,熱伝導特性のキャラクタライゼーションが難しい。また,自動車などに応用が期待される非連続繊維型複合材は,繊維が板厚方向に曲ったり,傾いたりしているため,局所的な熱伝導率分布が生じ,通常の熱伝導率推算や測定法で評価することは難しい。さらに,量産性が期待される熱可塑CFRP 製造技術において,繊維長,樹脂流動スピード,温度分布の影響でプレス成型したCFRP の繊維配向の偏りやボイド発生が問題となっている。しかしながら現時点での繊維配向性評価方法は強度試験やX 線CT 観察など,試料を切出す必要性や長時間を要するなど,簡便で実用的な方法がない。

そこで本研究は,複合材料に内在する3 次元の熱伝導異方性分布を,マイクロおよびマクロスケールで高精度かつ迅速に測定できる手法を独自に開発し,これまで有効な方法が無かった先進複合材料のマルチスケールでの熱伝導率異方性分布評価技術を確立するとともに,本技術を非連続繊維型複合材料などのランダム配向複合材料に応用することで,従来にはない熱伝導率分布と繊維配向性分布を非接触で迅速に同定できる独創的な技術とその解析理論を確立することを目標とする。これにより,航空宇宙分野をはじめ様々な応用が期待される先進複合材料の製造技術や品質評価技術,および熱設計精度の飛躍的向上を目指す。

方法

図1に示す現在開発中の手法ではレーザーで試料表面を加熱し,裏面温度応答からわずか数分で熱拡散率を測定できる.これまでにCFRTP板材を複数点測定し,熱拡散率角度分布をマッピングした(図2).また各々の分布形状を定量的に評価するプロセスを開発した.これは競合するX線CT法と比較して,短時間かつ大型試料の測定が可能であることを示唆し,品質管理のためのインライン非破壊検査法として有用であるといえる.現在は,科学研究費補助金,ナショナルコンポジットセンター,および企業の支援を受け,さらなる測定時間の短縮化・測定対象の拡大を検討している.また繊維配向と熱拡散率異方性の関係を明らかにするため,炭素繊維・樹脂複合熱伝導モデルを用いた数値シミュレーションを実施している.

主な成果

図1 サーモグラフィ式熱拡散率測定装置
図1 サーモグラフィ式熱拡散率測定装置
図2 熱拡散率角度分布の測定結果
図2 熱拡散率角度分布の測定結果

(藤田涼平)