LHPの長距離・抗重力化
背景および目的
Loop heat pipe(LHP) は,蒸発器内部に挿入された ウィックと呼ばれる多孔体の毛細管力を駆動源として作動流体の一方向ループを生み出し,作動流体の気液相変化を利用することによって蒸発器から凝縮器へと熱輸送するデバイスである. ポンプなど流体を循環させるための電力を一切使用することなく熱輸送が可能である.従って近年の省エネルギー化の必要性の中で,電子機器の冷却や自動車の排熱利用,太陽熱を利用した住宅エネルギーシステムへの適用など,民生分野での実用化が期待されている.またヒートパイプやサーモサイフォン等,LHPと同様に無電力で熱輸送が可能なデバイスは存在するが,LHPは長距離熱輸送性能に優れ,熱源が放熱部よりも上方に位置するトップヒートモードでの熱輸送特性を有するため,LHPは次世代のエネルギーマネジメントの一翼を担う非常に有用なデバイスであると言える.
本研究の目的はLHPの長距離・抗重力熱輸送化であり,10mの熱輸送距離をトップヒートモードで動作可能なLHPの開発を目指す.
方法
前例のないスケールの長距離かつ抗重力熱輸送化に向けた課題は,駆動源である多孔体の毛細管力によって作動流体の循環を生み出す必要があることである.これまでに図2に示すLHPで片道10mの無電力熱輸送を達成した.トップヒートモードでは,液管を流れる液体を重力に逆らって蒸発器へと運ぶ必要があり,従来用いられてきた多孔体では実現不可能である.そこで本研究では,これまで用いられてこなかったサブミクロンオーダーの細孔半径でありながら,かつ高い浸透率を有するサブミクロン多孔体を用いることによって本研究を実現するために必要な100kPaオーダーの毛細管力を生み出すことが可能となった.すでに抗重力型LHPを構築し水平状態での動作を確認した.今後は凝縮器に対して蒸発器の高さを変更して実験を行っていく.
主な成果
- Kazuya Nakamura, Kimihide Odagiri, and Hosei Nagano, “Study on a Loop Heat Pipe for a Long-Distance Heat Transport Under Anti-Gravity Condition,” Applied Thermal Engineering, Volume 107, (2016), Pages 167?174.
- Kazuya Nakamura, Kimihide Odagiri, Hosei Nagano, “Study on a loop heat pipe for a long-distance heat transport under anti-gravity condition,” First Pacific Rim Thermal Engineering Conference, (March 13-17, 2016, Hawaii’s Big Island, USA).
(中村和也)



